以前、ギャンブル依存症の治療が保険適用になるとのことで、反対意見も出る騒動がありました。
もっと他のことにお金を……という話でしたね
しかしこれは、のちに保険適用が決定し、2020年4月からは3割負担で病院を受診できるようになっています。
ただ、じつをいうとギャンブル依存症は、そのまえからも保険は適用されていました。
加えて、ものによっては保険適用外となることもあるようなので、本記事ではつぎのことを解説します。
- ギャンブル依存症が保険適用なのはなぜか
- 保険適用となる治療プログラムとその効果
- もともと保険が適用されていたのはなんだったのか?
この件に関しては、病院や厚労省にも問い合わせて確認が取れています。
本記事を読んでもらえれば、ギャンブル問題を解決する選択肢に「病院」も加わると思うので、どうぞ最後までごらんください。
ミナト
10代で行った初めてのパチンコで大勝し、パチンコ・スロット漬けの日々へ。借金を重ね、多くを失い、10数年もの間ギャンブルをやめられなくなる。しかし他者の力も借りて依存症を克服。その経験をもとに依存からの脱出方法を発信している。併設店・専門店での従業員経験もあり。>> プロフィール詳細はこちら
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ギャンブル依存症が保険適用なのはなぜか
そもそもの話、ギャンブル依存症に保険が適用されるのはなぜなのか?
その理由から確認していきましょう。
これは、世界的にみてもギャンブル依存症が、以下のとおり精神的な病気だと考えられているからです。
- WHO(世界保健機構)が作成した『国際疾病分類』では「病的賭博」
- アメリカ精神医学会が作成した『精神障害の診断・統計マニュアル(DSM)』では「ギャンブル障害」
とくに「ギャンブル大国」ともいわれる日本では、過去にさかのぼればギャンブル依存症者の数は世界でいちばん多い、という統計結果もでています。
それだけ、この問題は身近なものでもあるのです。
でも、自己責任なんじゃないの?
そう、対象がギャンブルという「遊び」に該当するものなので、そのように思われてしまうこともあります。
しかし依存症は、脳の伝達機能に異常が起こることによって、自分の意思では制御ができなくなる「コントロール障がい」です。
自己責任という言葉で片づけられるものではなく、依存症はれっきとした病気。
そういったことからも、これらの治療には保険が適用されるわけですね。
ギャンブル依存症者には人の助けが必要
ところで、ギャンブルをふくむ依存症は、大きく分けると以下の3種類に分けられます。
- 物質依存・・・アルコール、ニコチン、(違法)薬物など
- プロセス(特定の行為)依存・・・ギャンブル、買い物、インターネット、ゲーム、盗癖など
- 関係依存・・・性依存、DV依存など
依存対象はそれぞれ異なりますが、すべてのものには、
- 自分ではやめたくてもやめられない
- 自分の意思ではコントロールできない
という共通点があり、最初は、自分からやりはじめるものも多くなっています。
けれども、自分の意思で始めたものが、自分の意思でやめられなくなってしまったら、その人はどうすればいいのでしょうか?
だれかに助けてもらうしかないな
そう、人に手を差し伸べてもらえなければ、その依存から抜け出せない人も数多くいます。
だからこそ、そういった人のために公的な救済が用意されていて、依存症の一種になるギャンブルもその対象になっているわけです。
IR誘致(カジノ)がらみの決定にも理由があった?
- ギャンブル依存症はれっきとした病気
- 当事者だけでは問題を解決できないケースも多い
ギャンブル依存症に保険が適用されるのは、こういった理由があります。
ただ、この話にはべつの側面(裏側)もあったようなので、あわせて見ておくことにしましょう。
ギャンブル依存への保険適用うんぬんが問題になったのは2019年。
日本では、カジノをふくむ統合型リゾート(IR)の誘致をひかえ、依存症対策の強化をせまられていた時期でした。
そういったタイミングで、厚生労働省は「ギャンブル依存症に公的医療保険を適用する検討に入った」とメディアで報じられたわけです。
で、気になった私は厚労省に問い合わせてみた、と
私が問い合わせたのは、「この保険適用の件はどういう話なのですか?」というものでしたが、当時はつぎの回答をもらうことができました。
「中央社会保険医療協議会(中医協)」という、健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する、厚生労働省の諮問機関によって議論がおこなわれています。(厚労省より)
ようは、専門家の会合でそういった話があがって会議されている、という話で、最終的には2020年4月からの保険適用が決定。
結局のところカジノをつくるためなんじゃ?
というのはハッキリとはしませんでしたが、タイミング的に考えても、この件はやはりカジノがらみだったと思われます。
だからこそ、この件は批判的な意見もあがることになってしまったのでしょう。
でもそこは、たまたまそういうタイミングだっただけの話なので、あまり気にする必要はないと私は思いますよ。
40%の成功率が確認された治療プログラムとその効果
ちなみに、2020年4月から保険適用となったのは、「集団治療プログラム」というものです。
- ギャンブルにのめり込んだきっかけ
- ギャンブル依存症への対処法
こういったものを、複数人の患者グループで意見交換をする、というものですね。
このプログラムでは、以下の効果が確認されているといいます。
時間/対象者 | 介入者の成功率 | 非介入者の成功率 |
---|---|---|
1か月 | 56.4% | 4.4% |
2か月 | 46.8% | 4.4% |
3か月 | 42.6% | 2.2% |
なんと、治療プログラムを受けた介入者は、3か月後の断ギャンブル率が40%を超えていたというのです!
この有効な治療法にもとづき、精神科医および看護師、または作業療法士の指導のもと、
- 人数は10人
- 期間は3か月を限度に2週間に1回
- 1セッション60分以上
以上の条件でおこなわれる集団療法が、ギャンブル依存症の保険適用となったわけです。
これが決定した背景・疑惑(カジノがらみ)はさておいても、ギャンブル依存症の当事者にはよい知らせといえるでしょう。
病院に行って治療を受ければ、なにもしないのに対し、10~20倍近くの効果が得られる可能性があるからです。
ギャンブル依存症の治療は、投薬などではなく、こういったグループでのセッションがもっとも効果的ともいわれています。
病院に行くのも、ひとつの選択肢として考えてもいいかもしれないですね。
パチンコ依存症にもともと保険が適用されていたのは?
ところで、かくいう私も元ギャンブル依存者で、病院を受診しようかと考えたことがあります。
ギャンブル問題を得意とする病院に問い合わせました
そのときのことも、ついでにお話ししておきましょう。
私が電話をかけたのは、保険適用が始まる2020年4月よりもまえでした。
ところが、受付に費用の質問をしたときの回答は、以下のとおりとなっていました。
すべての治療プログラムは保険が適用されますので、費用は3割負担となります
なんと、この病院では、ギャンブル依存症の治療はもともと保険が適用されていたというのです!
加えて、集団治療プログラム(集団精神療法、集団認知行動療法)といった、その後に保険適用となったグループ療法にも保険は適用されると。
となると、この保険適用の件はいったいなんだったのか? という話にもなってきます。
もとから保険が適用されていたわけですもんね
これに関しては、病院によっては全額自己負担(自由・自費診療)のところもあるなど、どういうわけか病院によっても異なるようでした。
結局私は病院には行かなかったので、くわしいことまでは聞けませんでした。
しかし、いずれにせよ、もともと保険が適用されていた病院があるのなら、こういえるのではないかと思います。
新しく保険が適用されたから行きにくい(公的保険にたよるのに負い目を感じる)というのは考えなくてもいい。
病院に行くのを検討するさい、保険どうこうで、変にためらう必要はないということですね。
パチンコ・パチスロ依存の解決は病院以外でもできる
ギャンブル依存症の克服には「集団でのプログラムが効果的」、というのがここまででわかりました。
ただ、これがおこなわれているのは、なにも病院だけではありません。
有名なところが2つあるので、こちらもご紹介しておきます。
- GA(ギャンブラーズ・アノニマス)
ギャンブル問題の解決を目的とした世界的な自助グループ。定期的に本人、または本人以外も集まる会が全国でひらかれ、当事者同士でのミーティングがおこなわれている。
- RSN(リカバリーサポートネットワーク)
パチンコ・パチスロ依存問題を解決するために設立された相談機関。ギャンブル依存症の本人、または家族で参加する対面相談会が毎月おこなわれている。
病院に行くのはお金がかかりますが、GAは寄付で成り立っているので基本料金は無料です。
RSNの対面相談会は、完全無料で参加することができます。
公的保険どうこうも関係ないので、それが気になるなら、こういったところを利用することで、病院に行くのと近い効果が得られるでしょう。
また、病院に行かないでも私がギャンブル問題を解決できたのは、パチンコ店を出入り禁止になるプログラムを活用するなど、他者の力を借りて行動してきたからにほかなりません。
さきのとおり、なにもしていなければ、ギャンブル問題を解決できる可能性は2~4%以下、長期で考えればもっと低い確率でしか成功しないともいえます。
自分ひとりでも始められることはたくさんあります。
病院に行く必要もなく問題を解決できれば、それに越したことはないでしょう。
- 病院に行くのに抵抗がある
- まだ自分ひとりでも戦える余地がある
そういったときは、まずは病院に行かないでもすむ方法(ページ末尾の関連記事からどうぞ)からためしてみるのもおすすめですよ。
今回のまとめ
- ギャンブル依存症にも新しく保険が適用された
- もともと保険適用だった病院もあるので負い目を感じる必要はない
- 病院に行かずにすむ方法もあるのでまずはためしてみるのがおすすめ
もともと保険が適用されていた病院は関係なさそうですが、2020年4月以降は(一定のガイドラインにそえば)、ギャンブル依存症の治療は保険適用となりました。
ただし、ガイドラインにそっていない場合は保険適用外のまま、ということにもなるのかもしれません。
よって、ギャンブル依存症で病院に行くときは、「その病院は保険が適用されるのか」はさきに確認しておいたほうがいいでしょう。
費用は病院にもよりますが、3割負担なので、初診は3000~4000円とか、再診は1500円とか、そこまで高いわけではありません。
ただでさえお金がないのに、病院に行くと高い費用を請求されてお金が……
ということは、以前よりも起こりにくくなっているはずなので、そこは心配する必要はなさそうです。
またこの件は、当時は反対意見も散見されましたが、もともと保険が適用されていた病院もたしかにありました。
そんなわけですから、これを利用することに、負い目を感じたりする必要はないでしょう。
ギャンブル問題を解決するひとつの選択肢として、どうにもならないときは、病院の受診も考えてみてください。
それと最後にもうひとつ。
なにもしなければ問題はほぼ解決しないと思われるけれども、病院に介入してもらわなくても、自分で自分自身に介入することはできる。
そんなわけですから、ためしたことのない方法があれば、ぜひ実践してみてください。
病院に行かなくても、ギャンブル依存症は回復します。
それは元重度の依存者だった私が実証しているので、きっとだいじょうぶですよ。
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